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 術後2ヶ月間経過した頃、左後肢の運動が劇的に改善されてきた。プロプリオセプションが戻り、前肢との協調運動が起こり、歩行可能となった(図18)。反対側の右側後肢は完全麻痺のままであった。
 膀胱の麻痺は当初から続いており、今も改善はされておらず、自力排尿は不可能である。

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 電気生理学的神経伝達試験により、正常とは異なるものの、脊髄の伝導路の回復を認める徴候を認めた。
図19b
これは頚部筋組織に刺入したニードルから発射した電位が、脊髄の運動神経を介して、末梢神経である坐骨神経付近に刺入したニードルに伝達するのを筋電図発現から調べる試験である。
Control(図19a)に比較して筋電図の現れた部位は遅れており、しかも電位が低い。このcグラフのパラメーター(20mV/1枠)は、aのControl(200mV/1枠)に対して10倍であることから、正常に比して約10分の1の電位ということになる。反対側つまり右後肢の坐骨神経付近での筋電図では明らかな反応はなかった(図19c)。

 ラットなどの齧歯類において、脊髄の実験的完全断裂からの回復つまり再生は報告されている。しかし、重度脊髄損傷を起こして長期経過した猫における臨床例の完全後肢対麻痺からの回復は、いまだにほとんど報告されていないのが現状である。
 本症例では、左後肢の運動麻痺が有意に改善されており、前肢との協調運動が発現した。プロプリオセプションが回復し、ナックリングが消失した。体幹の重心を察知しており、倒れそうになるときの踏み直り反射があることから、左後肢と大脳の連絡は存在すると示唆される。


この現象がなぜ起こったかは、臨床例であることから調査できないが、脊髄損傷部に注入した自己骨髄間葉系細胞が、何らかの神経系細胞に分化した可能性、または神経系細胞に働きかけた可能性も否定できない。

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